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zoom RSS Judas Ark (ユダの方舟) U

<<   作成日時 : 2009/06/15 17:20   >>

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 旅の途上、大河を前にして聖なる救世主と11人の使徒が造った方舟は…

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 旅の途上、大河を前にして聖なる救世主と11人の使徒が造った方舟は、ちょうど12人が乗れるだけの広さの、その名の通り、正方形の床面をもつ小さなものだった。その方舟に12人が乗り込み、まさに船出しようとしたそのとき、1人の小男が現れて、救世主に「自分も使徒に加え、その方舟に乗せてほしい」と言った。11人の使徒は皆「13人目を乗せることは不可能」と口々に救世主に告げた。だが、小男は言った。「あなたがた12人のすべてが身の置き場を少しずつずらせば、私のための隙間が方舟に生まれるだろう」と。小男の言葉に従って12人がその居場所を移していくと、確かに小男が身を収められる広さの空間が出現した。救世主は、小男がもたらしたささやかな奇跡を称え、望み通り小男を使徒に加えてやることにした。こうして、13人目の男「ユダ」を含めた一行は、方舟を大河に浮かべて旅立った。 − 小伝「偽ユダ記」−

 2002年12月に考案し、2003年7月に製作・発表した "Judas Ark (ユダの方舟)T"は多くのパズル家の方から好評価をいただくとともに第1期製作品がすぐに完売となり、再販リクエストも多かったため、翌2004年7月に再度製作しました。この2回の製作品は、次のような4種類でした。

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 ただ残念なことに、このピース構成の作品には前例があることが製作後数年を経た2007年3月に明らかになりました。
 そのことに関する最初の情報は第1期製作後すぐにもたらされたのですが「前例がある」という言葉が間接的に耳に入っただけで詳細はわからずじまい、近しいパズルの歴史等に詳しい方々に尋ねても明らかな前例や類似品については「知らない」との返事。
 それでも再製作することはしばらくためらいました。しかし、「あいまいな情報に振り回される必要はあるだろうか? もし詳細が判明して前例と認められるものが確認できたら、その時点で善処すればよいのではないか?」 そう考えて、第2期製作に踏み切ったのでした。
 そうして2年半ほどが経過した2007年3月、パズル関係のサイトをあれこれ検索したときに偶然、正に "Judas Ark T"そのままのパズルの画像を発見しました。コピーライトは「92」(1992年)となっており、それが正確なら(正確でしょう)私がデザインした10年も前のことになります。そして、ピースの辺の比率をその小さな画像から推し測ってみるとそれも全く同一に見えます。
 「ああ、やっぱりあったのか!」 とても残念ですが、ここまで明らかな前例の存在を知った以上、今後は "Judas Ark T"を製作し頒布することはできません。もちろん、そうした前例を全く知らずにデザインしたものではありますが、これは自デザインの作品としては「封印するしかないな」と。


  "Judas Ark (ユダの方舟)"は 〈12+1〉ピースの図形トリック・パズル。これ以前に同コンセプトの 〈16+1〉ピースのパズルがあり市販もされていたことを第1期製作後に、これも初めて知りました。
 このときは「ああ、同じ原理はすでに考えられていたんだな。でも、そこまで考えたのなら、なぜ〈12+1〉ピースにたどりつけなかったのだろう? しかしまあ、おかげで "Judas Ark (ユダの方舟)"の存在する余地が残されていたわけでよかったよかった」と思ったものです。
 パズルの世界、数や図形の原理に根ざす作品が多いこの世界では、アイディアのバッティングはそう珍しいことではありません。あるエレガントなピース構成の立体パズルを案出したときにそのことを他の人に話したら「とてもいいアイディアだけど○年遅かった。そのパズルはもう世の中に存在している。作者は私」と言われたこともあります。
 もう一つ、私自身が遭遇した印象深い実例についても書いておきます。
 2001年の夏、20年程前からほぼ毎年出かけている山梨県小淵沢でのこと。「スパティオ小淵沢」という、今は道の駅も隣接している施設の屋外の林の中で、木工品や陶芸,ガラス細工などさまざまな工芸的作品が展示販売されているフリーマーケット的なイベントが開催されていました。その中のお店の一つを覗いてみたら、ペンタキューブのセットなどポリキューブ系の木製品が売られていました。中国地方からそのイベントに参加していたその店のオーナー作者の方に話を聞いてみると、「立方体5個を平面的にくっつけると12種の形ができ、これで6×10などの長方形になることを発見した。さらに直方体もできないかと思って長いこと調べた結果、3×4×5などに組めることがわかった。それでこの積み木セットを作って売り始めた。その後、小黒三郎さんとはお会いする機会があり、そういうものがすでにあることは知らされたけれど、その名称とか詳しいことは知らないまま…」とのこと。そこで、私が簡単にポリオミノの概略やソロモン・ゴロムのことなどを説明すると一生懸命にメモ、そして「こんなことを説明してくれる人には初めて会った」 ペントミノのようなピース構成は予備知識がいっさいなくてもそれを自ら発想できる人はいるわけですね。ただ、それが最初の発見ではなかったというだけのことで、発想できたことは賞賛されてしかるべき。中学校3年で学習する「三平方の定理」を、習う前にその公式を自ら思いつきさらに証明までも考えてしまうことができた子どもがいたとしたら、「それはもう数千年前から知られていること」であると後で申し添えてやることも必要だろうけれど、まずはその発見を讃えてやるのが先でしょう。そんなことを思わせてくれた出来事だったわけです。


 多少言い訳めいた話で長くなっていますが、2003年と2004年の2回の製作品は海外のパズル家にも頒布したにもかかわらず、特にこれまでどこからも何のクレームもないまま今日に至っているのは不幸中の幸い、といったところでしょうか。前例を承知で製作したり頒布したわけではないので、過去の製作自体に後ろめたさは微塵もありません。

 さて、 "Judas Ark (ユダの方舟)U"です。
 このデザインも "T"とともに2002年12月に考案し、可能ならば2003年に同時に製作したいと考えて図面は完成させていました。
 同じ原理の 〈12+1〉ピースの図形トリック・パターンは実は無数に考えられます。当時、20〜30通りくらいの図を描いた中でデザインとして特に気に入ったのが "T"と "U"の2種でした。ただし、"U"のピースには凹多角形が含まれているので、三角形と四角形(正方形)のピースだけで構成された"T"のように容易には作れなかったため製作を見送ったのでした。盤面に収めたときのパターンは"U"の方が実は好きだったのですが。
 そしてこれも、他の多くの平面的パズルと同様、身近でレーザーカットをしてくれる製作所とかかわりが持てた結果、ようやく製作できることになりました。

 製作イメージ図は。

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 “RITRI-14”と同じく、アクリルのカラーピースを黒い枠のトレイに収めます。

 そして、下の写真が完成品です。

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 これも “RITRI-14”同様、色違いの3つのタイプが出来上がりました。

 ここで、冒頭のタイトル・ラベルについてもちょっと触れておきます。
 “RITRI-14”のラベルを仕上げた後、同時に出す "Judas Ark (ユダの方舟)U"のラベルは全く違った趣のものにしたいと考えました。そこでご登場願ったのがラファエロ作「箱舟の建造」という絵画、正にイメージぴったりの方舟製作の絵です。むろん、原画の主人公はノアでしょうが、箱舟建造を指揮しているのが「救世主」であるとの見立てはそう不自然でもないでしょう。この原画を少し派手めなセピア調に変えてみました。まさかラファエロさん、約500年を経てこんなところで自分の絵が使われるとは思ってみなかったことでしょう。色を変えちゃってゴメンね。申し訳ないので、オリジナルのカラー版も紹介しておきます。(もっとも、下の画像の色合いがどこまで原画に忠実なものかは不明です。大まかにこんな色がついた作品なんだな、とそのように観てください)

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 最後に、封印すべき過去の作品 "Judas Ark (ユダの方舟)T"についてネット上に書かれた、とあるサイトの文を大いに拝借・引用させてもらって問題内容を紹介させていただくことを、?さん、どうぞお許しください。


 正方形のフレームの中にピッタリと収まっているピースが12枚。ですが、並べかえるとさらに13枚目となる小さな正方形のピースが収まってしまうというのです!!

 あり得ない!!と、思われるのですが…。なんと!!ピッタリと収まってしまったのです!!!

 収めること自体はそれほど難しくないのですが、解けたと同時に新たな謎が…
 「なぜ、入るの????」

 そう、このパズル、解けた後が大問題なのであります。

 物理的にあり得ないではないですか!面積の計算が合いませんよね、絶対に!
 でも、目の前ではピッタリと収まっている…。不可解な現象です。どうして?

 普通、パズルは解いてしまえばそれで終わりですが、このパズルは解けた後にさらなる疑問が湧くという不思議なパズルです。
 この狐に抓まれたような感覚、ぜひ味わってほしいです。



 そう、このパズルはこういう風に考えてくださる方のためのパズルです。
 上は "T"を目の前にして書いてくださった文に基づくものですが、同じ現象はむろん "U"でも健在です。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんちは

ユダの箱船。似たような名前のパズルを持っていますが。
1単位のキューブを、三角を基本にしたピースのを置き換えて、いれるというものですが。MINEさんの作品かと思っていましたが。勘違いかなぁ
ブログで紹介されているのは、はじめてみるし?

まぁ、それはさておき。
今日(6/18)は、ひさしぶりに。パズラボへ、参りました。
例のハナヤマのブック型パズルを、置いてあるかと思って。残念ながら、売り切れたとの事。
そこで当初予定していたオリジナルを購入しました。
Dnacing Murder Case。
どんなミステリアスな文章が書かれているのか。見てみたかった、と言うのもあるんですけどねぇ。
まぁ、オリジナルが入手出来たことでGoodと考えましょうかね
エンタSUN
2009/06/18 23:41
エンタSUNが書いていられるモノは、記事中の写真の“I”ではないですか? 説明がこのパズルの内容に合致していますし、日本で「ユダ」や「方舟」といった言葉をタイトルに使っているパズルは他にないのではないかと思います。

またパズラボを訪問されたのですね。私もこのところ月に1回くらいの割合で訪れています。

“Dancing Murder Case”については、そのタイトルの由来等について書くつもりでいたことをまだ書いていません。そのうちに…。
MINE
2009/06/19 22:42
こんちは

あ、成るほど。赤字の部分を、よく読んでいなかった。
そうですね、” l ”ですね。
まぁ、自分が入手したの作品の枠が微妙に緩かったからかもしれませんが。面積差が出たときに。
「例え1ミリの幅でも、100ミリの長さが有れば。100平方ミリになる。」という視点から。再配置されたピースの位置関係と角度を、分度器を使って調べたら。
成るほど~~~~~! 旨くできている、とうなりました。
当時は、MINEさんのことを知りませんでしたから。このひとは、鋭い。とひたすら関心していましたね。
自分の稚拙な知識でも、どうにか理解できそうだったので。うなずけたわけなのですが。
その後も、いくつか作品を手にしていますが。
どれも、解がエレガント(個人的感想として)なので。
ただ、素晴らしいと。
そのなかで、2エクセレント ソルバー?と書かれていた、小さな詰め込みパズル(立方体で、一辺5cm)が一番すきな作品です。
あれは、組みあがったときの珠種の色調とタイルパターンが美しい。
エンタSUN
2009/06/20 10:21
6月末までに済ませなくてはならない用事を優先して、コメントへの返事に間が空いてしまいました。

「2エクセレント ソルバー?」は、副題のように“2 elegant solutions”とラベルに書き入れた“The CUBE of CUBEs”ですね。これについての記事もまだ書いていませんでした。いずれ再製作、そしてそのときに詳しく紹介記事も書きたいと思います。
MINE
2009/06/24 14:25
重ね重ね申し訳無い。
英語の苦手な私ゆえ、間違えてしまいました。
そうでしたね「2つの上品な解決策」
作者として、作品名を間違えられるのは不愉快でしょう。
大変失礼致しました。m(_ _)m
(今度は、辞書を見て確認したいと思います)
エンタSUN
2009/06/24 23:36
エンタSUN、気になさらず、コメントをどうぞよろしくお願いします。
エンタSUNのコメントを、私自身が忘れている作品を思い起こす縁(よすが)にもさせていただいています。
MINE
2009/06/26 02:31

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