Transforming Burr

 西海岸からのパッケージの中身の一つはこれ。Transforming Burr です。

画像

 このパズルの考案者は Kouki Kusumi 氏。 Rough Night Burr に続く氏の組木作品・第2弾です。

画像

 Kouki Kusumi 氏に関する情報は、私がもたもたしている間(その前か)に他所のサイトで先に明かされてしまいましたが、
1994年11月生まれで、今現在、中学3年生。受験勉強の真っ最中です。
 Rough Night Burr の原型を考案したのが2008年の13歳のとき、そしてこちらは同年、14歳になりたての頃に考案された作品です。

 4通りの形に組むことができる組木、そんな発想で考案された「まさしく組木、組木らしい組木」といえるような作品はかつてあったでしょうか?

 今年の1月、保護者同伴でパズラボを訪れた Kouki さん(以後、このように呼称させてもらいます)と、私の元でパズル製作をさせてもらうことについて直接お会いして初打合せ(Koukiさんだけとは以前にも会っています)。少額とはいえ、お金がからむことでもありますから、保護者とも面談をさせていただきました。(本人・保護者2名との四者面談、その状況にデジャ-ビュ? いや、Koukiさんの保護者の方が面接官ですね) そして、一応面接は合格とさせてもらい、以後しばらくは私がパズル界における後見役となるとともに Kouki さんの作品の全面的プロデュースをさせてもらうことに。

 そのとき「IPPパズルコンペにも応募してみたい」という Kouki さんの要望を受けて「ならば出品作は Transforming Burrがいいんじゃないか。このアイディアは画期的。そしてその前に時期を見て Rough Night Burrで先行ネット・デビュー…」と話がまとまりました。

画像

 この組木作品で、最も組み外しが難しいのが上の形状。玉を抱えた龍の手のようなイメージ、私にはそんな風に見えます。
 キューブ以外のピースが2種類でそれが3個ずつの計7ピース、この形自体も Rough Night Burrのようにかなりトランスフォームします。

画像

 しかし、玉じゃなくてキューブが、偶然、ポロッと外れることはありません。
 私は Kouki さんに解答図を送ってもらうまで、「龍と玉」形状に組むことはできませんでした。

 時は経過して5月、いよいよコンペ出品作をつくり始めました。予備も入れて3セット。

 この作品のベストなつくり方は?

 木製パーツを接着してピースをつくるパズルの場合、面取りをどうするか?というのが一つの大きな考えどころです。
 面取りをするのとしないのとでは作品の趣も手触りもかなり違います。もちろん、手間とコストがかかっても面取りをした方が断然よいのはあきらか。
 でも面取りは相当に手間がかかるんです。プロの職人さんも面取りをしたほうがいいことは百も承知であっても、うれしがってニコニコとその作業をする人は見たことがありません。(それ以外の作業も笑いながらしているのは見たことがありませんが)

 つくる作品毎に面取りをどうするか考えます。

 いちばん楽なのは Rough Night Burrのように、ピースをつくった後に機械で面が取れる凸エッジだけに面取りを施す方法です。組んだときにはそれがちょうど外側に出るので手触りもよく、高級感も増します。
 外には出ない凹エッジの面取りは省略するわけですが、Rough Night Burrではそこは面取りを施さない方が完成形が美しいので、その点でも好都合。
 組むべき形が1通りの作品は、私がつくるものだけでなく、たいていがこの方法。(全く面取りをしないのは問題外です)

 でも Transforming Burrはそれではだめです。何しろ、組むべき形が1通りではないので、凹エッジが外側に出る場合もあるわけです。つまりは、凸にしろ凹にしろ、ピースの全てのエッジの面取りがなされていなければならない!

 その解決策として、直方体形状のパーツ段階で全てのエッジの面取りをするという方法が考えられます。
 実は、これが非常な手間で、パーツが小さければ小さいほど機械に指を取られないよう神経も使っての作業になりますから、これはあまり好まれないわけです。(私自身、木工所の機械を時間貸しさせてもらい、これまでにこの作業をかなりやっています)
 とはいえ、このパーツを接着していってピースを仕上げれば面取りの問題はクリア…。

 となればいいのですが、残念ながらそううまくはいかない。

 上の方法だと、接着したピース各面のあちらこちらに無用な溝の線がついてしまいます。これは美しくない。まして、コンペ出品作。

 上の方法は、箱詰めパズルのピースのように、そうした筋が気にならない作品で用いる面取りです。(ときには運良くその線が意味を持つ場合もあります。たとえば Juno's Puzzle Matのように。さらには Eureka NEOの場合には、無意味な溝線をかくすために全ての単位立方体に溝線をつけてしまいました。まあ、このときは体積計算をしやすくする意味もあり最初からそうするつもりだったわけですが)

 さて、では Transforming Burrの面取りは?

 結局、いちばん面倒で時間がかかり、しかも神経もいちばん使う方法を選びました。
 それは、パーツを貼り合わせた後に、機械で凸エッジの面取り、その後、機械で取った面取りの深さに合わせて似せて凹エッジを全て手作業でヤスリがけして面を取る、というもの。
 さすがにここまでは職人さん、引き受けてくれません。ですから、私自身がそれをすることにしました。

 パーツを接着してのピース作り・機械面取り・手作業の面取り・そしてオイル塗装。
 そうして出品作2セット、プラス予備1セットの3セットを仕上げました。
 下の写真はまず1セットを最後まで仕上げた段階で撮ったものです。

画像

 次は出品作2セットの写真。本体を見せるだけではこの組木の真価がわからないので、ディスプレイ用のシートを付けました。

画像


画像

 まあ、以上のように、かなり力を入れてあれこれ工夫してみたわけですが、残念ながら入賞には至りませんでした。

 「入賞した作品にはむろん優れた点があるだろう。しかし、入賞しなかった作品がそれらに劣っていたとは限らない」
 負け惜しみのように聞こえるかも知れませんが、これは過去、自分が出品した年もしなかった年も毎回、繰り返して思うことです。

 結果発表後、再びパズラボで Koukiさんと会ったときにも、私は同じことを言いました。

 たとえ無冠であったとしても Transforming Burrが画期的で優れたパズルであることに変わりはない。



 さて、そんな Transforming Burr ですが、完成品はまだ上述の3セットしかありません。
 早々と海外から合計4セットの予約注文もいただいているのですが、それも含めた実際の製品作りは10月半ば以降になる見込みです。全て出品作と同じ方法で仕上げていきますので、製作を終えるまでに1ヶ月くらいを要するのではないかと思います。

 いま、アメリカから帰還したうちの1セットはKoukiさんの手元に、私の元にあとの2セットが。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • MIMI 木菟 ZUKU

    Excerpt:  本格製作中のパズルの一つ。 Weblog: PUZZLE of MINE racked: 2010-06-25 01:11